商標権とブランドの違い| ブランドを守る権利としての商標権と、市場からの評価としてのブランド

この記事に書いてあること

  1. ブランドと商標権は密接に関係していますが、商標権は法律によって保護される権利であるのに対し、ブランドは市場や顧客から得られる信頼や評価によって形成される無形資産です。
  2. 商標登録だけではブランドは生まれず、品質や技術力、情報発信などの継続的な価値提供によって初めてブランド価値が育まれます。
  3. また、ブランド価値が高まるほど商標権による法的保護の重要性も増し、両者は相互に補完し合う関係にあります。
  4. 知財戦略、ブランド戦略、事業戦略を一体的に進めることが、大企業、中小企業、スタートアップ、アーティスト、アスリート、研究者などの持続的な競争力と企業価値の向上につながります。

目次

  1. 目次
  2. はじめに
  3. 商標権とは
  4. ブランドとは
  5. 商標権があってもブランドは存在しないことがある
  6. ブランドが存在していても商標登録されていないこともある
  7. 商標登録はブランド戦略の一部
  8. ブランドは企業だけのものではない
  9. ブランド価値は企業価値にもつながる
  10. Tokyo IP Consultingが考えるブランド戦略
  11. まとめ

はじめに

「ブランド」と「商標権」は混同されることが少なくありません。「ブランドを商標登録する」「ブランドを取得する」といった表現を耳にすることもありますが、実際にはブランドと商標は全く異なる概念です。

商標は法律によって保護される知的財産権である一方、ブランドは市場や顧客、取引先が企業や商品、サービスに対して抱く評価や信頼の総体です。

両者は密接に関係していますが、その役割は異なります。本記事では、ブランドと商標の違いを整理するとともに、知財戦略の観点からブランド戦略との関係について解説します。

商標権とは

商標権とは、商品やサービスを識別するための名称やロゴ、マークなどを法的に保護する権利です。

例えば、商品名、サービス名、会社名、ロゴマーク、シンボルマーク、キャッチコピーなどは商標登録の対象となる場合があります。商標権を取得すると、登録された商標について一定の範囲で他者による無断使用を防ぐことができます。

つまり、商標制度は「誰が提供している商品・サービスなのか」を識別するための法律上の仕組みです。ただし、商標登録をしただけで商品やサービスが売れるようになるわけではありません。

ビール瓶の王冠が多数集まっている様子の写真。色とりどりのビール瓶が写っている。

ブランドとは

ブランドとは、顧客、市場、取引先などが抱く評価や信頼、期待の総体です。

例えば、ある企業や商品を見たときに、品質が高そう、技術力がある、デザインが優れている、安心して購入できそう、信頼できそうと感じることがあります。これらはすべてブランドの一部です。

ブランドは法律によって作られるものではありません。企業が提供する製品やサービスの品質、顧客対応、デザイン、技術力、情報発信など、日々の活動の積み重ねによって少しずつ形成されていきます。

言い換えれば、ブランドとは市場との信頼関係そのものとも言えます。

商標権があってもブランドは存在しないことがある

商標登録をしただけではブランドは生まれません。

例えば、新しく会社を設立し、会社名を決め、ロゴを作成し、商標登録を行ったとします。この時点では法律上の商標権は存在していますが、市場ではまだ誰もその会社を知りません。

そのため、ブランド価値はほとんど形成されていない状態です。

ブランドは、良い製品、良いサービス、良い体験、良い評判が積み重なることで初めて育っていきます。つまり、商標権はブランドの出発点にはなりますが、それだけでブランドになるわけではありません。

ブランドが存在していても商標登録されていないこともある

一方で、市場で高い評価を受けているにもかかわらず、商標登録を行っていないケースもあります。

例えば、人気の飲食店、アーティスト、クリエイター、スタートアップ企業などでは、ブランドが形成されていても商標登録が十分でないことがあります。

この場合、市場ではブランド価値が存在していても、法律上の保護が十分とは言えません。

もし第三者が先に商標登録をしてしまえば、名称変更やライセンス交渉などを余儀なくされる可能性があります。

ブランド価値が高まるほど、商標による保護の重要性も高まるのです。

商標登録はブランド戦略の一部

ブランド戦略というと、広告やデザイン、SNS発信などを思い浮かべる方も多いでしょう。しかし実際には、商標登録もブランド戦略を支える重要な要素の一つです。

例えば、ブランド名を決める、ロゴを制作する、キャッチコピーを考える、ドメイン名を取得する、商標登録を行うなどの行為はすべてブランド戦略の一部です。

そして、その後も継続的な品質向上や情報発信を続けることで、市場からの信頼が積み重なり、ブランド価値が育っていきます。

ブランドは企業だけのものではない

ブランドは企業だけに存在するものではありません。

例えば、アーティストには作品や作風というブランドがあります。アスリートには競技成績だけでなく、人柄や挑戦する姿勢といったブランドがあります。大学や研究機関には研究力や技術力というブランドがあります。

このように、ブランドとは企業だけではなく、人や組織など、あらゆる主体に存在する「信頼という資産」と考えることができます。

ブランド価値は企業価値にもつながる

ブランドが強くなると、多くの経営上のメリットが生まれます。

例えば、顧客から選ばれやすくなる、価格競争に巻き込まれにくくなる、リピーターが増える、採用活動で有利になる、取引先や金融機関からの信用が高まるといったメリットが生まれます。

このように、ブランドは単なるイメージではなく、企業価値や競争力を支える重要な無形資産と言えます。

近年では、企業価値の多くをブランドを含む無形資産が占める企業も少なくありません。

Tokyo IP Consultingが考えるブランド戦略

私たちは、商標登録そのものを目的とは考えていません。

重要なのは、ブランド価値を高めるために知的財産をどのように活用するかということです。

商標権はもちろん、特許権、意匠権、著作権、営業秘密など、それぞれの知的財産はブランドを支える重要な基盤となります。

優れた技術、魅力的なデザイン、高品質なコンテンツ、独自のノウハウが継続的な価値を生み出し、その結果としてブランドが育っていきます。

私たちは、知財戦略、ブランド戦略、事業戦略を一体として考えることが、持続的な企業価値の向上につながると考えています。

まとめ

ブランドと商標は混同されがちですが、本質的には役割が異なります。

  • 商標権は法律によって保護される権利
  • ブランドは市場から得られる信頼や評価
  • 商標はブランドを守るための仕組みであり、ブランドそのものではない
  • ブランド価値を高めるには、知財戦略・マーケティング・事業戦略を一体として考えることが重要

ブランドは一朝一夕に完成するものではありません。

しかし、継続的な価値提供と適切な知財戦略によって、大企業、中小企業、スタートアップ、アーティスト、アスリート、研究者など、あらゆる主体にとって大きな競争力となる資産へと育っていきます。


この記事を書いた人

腕を組んで壁によりかかる渡辺浩司の肖像

渡辺浩司 (Koji Watanabe)

東京知的財産コンサルティング事務所(Tokyo IP Consulting)代表弁理士。東京大学理学部卒業、同大学院理学系研究科修士課程修了、同博士課程中退。2006年より弁理士。特定侵害訴訟代理業務付記。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。2014年にドイツ連邦共和国 Eisenführ Speiser・大韓民国YOU ME特許法人インターン。複数の大手特許事務所・特許法律事務所に勤務。都内弁理士事務所所長代理。独立行政法人日本貿易振興機構イノベーション・知的財産部出向。外資系設計会社財務・法務担当(役員ポジション)等を経て東京知的財産コンサルティング事務所設立。現在、プログラマーとしても活動中。主要取扱言語は、Web系言語全般、ruby、PHP、Python等。 


Reference

  1. ブランドとは何か?| ロゴや商標だけではない「選ばれる理由」の正体 [Link]

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