この記事に書いてあること
- 検索エンジンは、文字列だけでなく、人物・組織・場所・作品などの「実体」と、それらの関係を理解しようとします。
- 名称だけでは、誰がどのような活動をしているのかを特定できない場合があります。
- 商標とブランドの考え方からも、名称と事業・活動の結びつきを継続して育てる重要性が分かります。
- Schemaは、実際の活動や実績を整理し、その関係を機械に伝えるための手掛かりです。
目次
- はじめに
- 文字列と実体は違う
- 商標から考える、名称と事業の結びつき
- Schemaにも取り入れたい考え方
- 公式サイトの役割
- 構造化データができること
- 継続的な活動と情報発信
- Web全体の整合性
- Tokyo IP Consultingの考え方
- まとめ
はじめに
検索エンジンにとって「Smith」「Apple」「Mercury」のような文字列だけでは、それが誰・何を指すのか一意に決まらない場合があります。そこで重要になるのが、名称の背後にある人物、組織、場所、作品などの実体(Entity)と、その関係を理解する考え方です。
GoogleはKnowledge Graphの説明で、文字列だけでなく実体とその関係を理解する考え方を示しています。公式サイトでも、名前を掲載するだけでなく、「誰が、何をしているのか」を分かりやすく示すことが大切です。
文字列と実体は違う
同じ名前でも複数の人物や会社が存在します。逆に、同じ人物が本名、別言語での表記、SNSアカウントなど複数の名称で表現されることもあります。
例えば、同じ「Smith」という姓でも、所属、専門分野、活動地域、作品や実績が異なれば、別の人物です。名前と一緒にこうした情報を示すことで、読者は誰についての情報なのかを確認しやすくなります。
公式サイトで基本情報を一貫して示すことは、名称の曖昧さを減らす基礎になります。
商標から考える、名称と事業の結びつき
商標は、自社の商品・サービスを他社のものと区別するための標識です。その名称が商標として機能するかどうかは、使用する商品・サービスとの関係で考えます。
「apple」はリンゴを意味する一般的な単語ですが、コンピューターやスマートフォンの普通名称ではありません。このように、日常的な単語であっても、別の分野では商品・サービスの出所を示す名称になり得ます。
そのうえで、継続的な商品・サービスの提供や広告宣伝を通じて、「この名称といえば、この事業者」という認識が育っていきます。名称に結びつく信用は、実際の事業活動と顧客の経験によって積み重ねられるものです。
なお、日本の商標法には、一定の記述的な表示などについて、使用の結果として識別力を獲得した場合に登録を認める仕組みがあります。ただし、商品の普通名称そのものも、使い続ければ登録できるという制度ではありません。

Schemaにも取り入れたい考え方
商標の法的な保護と、検索エンジンによるEntityの理解は、異なる仕組みです。それでも、「名称だけでなく、その名称が指す主体と活動の関係が重要である」という点は、情報設計にも応用できます。
例えば、日常的な単語を社名に使っている会社なら、その名前だけを繰り返すより、所在地、事業内容、提供するサービス、公式サイトなどを併せて示した方が、どの会社についての情報なのかを説明できます。
Schemaは、こうした関係を機械可読な形で補足する手段です。Googleも、Organizationの構造化データが組織の把握や、他の組織との識別に役立つと説明しています。
公式サイトの役割
プロフィール、所在地、事業内容、作品、実績などを公式サイトに体系的に掲載すれば、その人物や組織について確認できる一次的な情報源を作ることができます。
会社であれば、会社概要とサービス紹介、実績紹介をつなぎ、誰がどのサービスを提供しているのかを明確にします。作家であれば、プロフィールと作品、展覧会の記録を結びつけます。
活動を続けながら情報を更新することで、名称だけでは伝わらない事業の内容や歩みを、読者が確認できるようになります。
構造化データができること
Schema.orgの語彙を使うと、このページは人物のプロフィールである、この名称は組織名である、といった意味を機械可読な形で補足できます。
例えば、Organizationでは名称や公式URL、所在地などを記述し、sameAsでは同じ組織についての外部プロフィールなどを示せます。関係のないサイトを結びつけるのではなく、同じ主体であることを確認できる情報を使います。
ただし、Schemaに書くだけで活動実績や信用が生まれるわけではありません。構造化データは、ページに掲載した事実を正確に反映させる必要があります。
継続的な活動と情報発信
ブランドの信用を育てるには、商品・サービスの提供を続け、顧客との関係を築くことが重要です。広告宣伝や情報発信は、その活動を知ってもらう役割を担います。
Webでも、事業や活動の実態に合わせて、サービス情報、作品、実績などを継続して発信することが基本です。Schemaも、その内容に合わせて更新します。
これは、更新回数や運用期間が増えれば検索順位が上がる、という意味ではありません。継続的な活動によって説明できる事実が増え、その事実と主体の関係を正確に伝える、という考え方です。
Web全体の整合性
公式サイト、SNS、所属組織、展覧会や大会の主催者、メディアなどには、同じ人物や組織についての情報が掲載されます。
名称の表記、所属、事業内容、公式URLなどが整合していれば、読者が同じ主体についての情報であると確認しやすくなります。変更があった場合には、公式サイトだけでなく、更新できる外部プロフィールも見直します。
外部からの紹介は、実際の活動に伴って生まれるものです。情報の数を増やすことより、正確で確認可能な情報を積み重ねることを重視します。
Tokyo IP Consultingの考え方
Schemaは、正確な情報を検索エンジンやAIにも解釈しやすい形で補足する情報設計です。
商標やブランドの視点を取り入れるなら、名称の選び方や保護を検討するとともに、その名称の下で事業・活動を続け、信用を育てることが大切です。公式サイトとSchemaは、その主体、活動、実績の関係を伝える役割を担います。
構造化データによる情報整理と、実際の活動による信用蓄積を組み合わせ、ブランド、知財、コンテンツ、SEOを一体的に運用していきます。
まとめ
名称は、事業や活動と結びついて初めて、その人物や組織を具体的に表すものになります。
公式サイトで誰が何をしているのかを示し、Schemaでその関係を補足しながら、継続的な活動と情報発信を積み重ねることが大切です。ただし、Schemaの導入によって商標権が生じたり、検索順位やAIでの紹介が保証されたりするわけではありません。
実際の活動、読者に伝える情報、構造化データの三つを整合させることが、運用の基本です。
この記事を書いた人

渡辺浩司 (Koji Watanabe)
東京知的財産コンサルティング事務所(Tokyo IP Consulting)代表弁理士。東京大学理学部卒業、同大学院理学系研究科修士課程修了、同博士課程中退。2006年より弁理士。特定侵害訴訟代理業務付記。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。2014年にドイツ連邦共和国 Eisenführ Speiser・大韓民国YOU ME特許法人インターン。複数の大手特許事務所・特許法律事務所に勤務。都内弁理士事務所所長代理。独立行政法人日本貿易振興機構イノベーション・知的財産部出向。外資系設計会社財務・法務担当(役員ポジション)等を経て東京知的財産コンサルティング事務所設立。現在、プログラマーとしても活動中。主要取扱言語は、Web系言語全般、ruby、PHP、Python等。
References
- Introducing the Knowledge Graph: things, not strings[Link]
- 特許庁, 商標制度の概要[Link]
- 特許庁, 出願しても登録にならない商標[Link]
- 組織(Organization)の構造化データ[Link]
- Google 検索上の構造化データ ガイドライン[Link]
- Schema(構造化データ)とは? | ブランド戦略・知財戦略における新たな情報設計[Link]
- 中小企業のためのSchema | AI時代に企業価値を正しく伝えるために[Link]
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