「生活に驚きと余白を」| 陶芸家・野村俊介さんインタビュー

この記事に書いてあること

  • 陶芸家・野村俊介は、昆虫や甲殻類など外骨格を持つ生き物をモチーフに、繊細で緊張感のある陶芸作品を制作している。
  • 東京藝術大学大学院で陶芸を専攻し、陶芸では難易度の高い細い脚や触角の表現にも挑戦。日常の自然観察から着想を得ながら、「生活や心を豊かにする作品」を目指して活動している。
  • 現在は展示活動に加え、自身のWebサイトを通じた作品発信にも取り組んでいる。

目次

  1. 「高校時代の陶芸部」が現在の活動の原点
  2. 「焼いてみるまで分からない」──陶芸という素材の面白さ
  3. 「思わず家に置きたくなる作品」を目指して
  4. 繊細な昆虫作品への挑戦
  5. 「昆虫の緊張感」を陶芸で表現する
  6. 「生活や心を豊かにしてくれるもの」
  7. 陶芸家・野村俊介さんについて

Tokyo IP Consultingでは、アーティスト向けWeb制作プロジェクト「Artist Portfolio」を通じて、作家自身の思想・制作背景・活動の魅力を丁寧に可視化する取り組みを行っています。

今回は、陶芸家・野村俊介さんに、作品制作への想い、制作スタイル、そしてWebサイト制作を通じて感じたことについてお話を伺いました。

「高校時代の陶芸部」が現在の活動の原点

野村さんが陶芸作品を作り始めたきっかけは、高校時代の部活動だったそうです。

「高校時代の部活動に陶芸部がありました」

学生時代の出会いが、その後の創作活動へと繋がっていきました。現在は、電動ろくろ・手びねり・焼成などを組み合わせながら、多様な表現に挑戦されています。

特に印象的なのは、昆虫や甲殻類など、生き物をモチーフとした繊細で立体感のある作品群です。その作品には、単なる造形技術だけではなく、「生活空間に置きたくなる存在感」と「見る人を驚かせる緊張感」が共存しています。

「焼いてみるまで分からない」──陶芸という素材の面白さ

野村さんは、陶芸素材の魅力について次のように語ってくださいました。

「土と釉薬の組み合わせや焼成方法などでも全く異なるものになるところや、焼いてみるまで完成品がどうなるかわからないところが陶芸の非常に面白いところだと思っています」

陶芸は、完成まで完全にはコントロールできない表現でもあります。焼成後に初めて現れる表情。釉薬の偶然性。土の質感。

そうした“予測しきれない変化”も含めて作品に取り込んでいく姿勢は、野村さんの作品世界の大きな魅力の一つです。

「思わず家に置きたくなる作品」を目指して

野村さんが大切にしているテーマは、単なる鑑賞作品ではなく、「生活を彩る存在」であることです。

「思わず家に置きたくなるような生活を彩る作品や、見るものを驚かせる造形作品を作ることを目指しています」

一輪挿し作品や昆虫作品には、単なる技巧性ではなく、“日常に小さな驚きや余白を持ち込む力”があります。また、同業者から技術的な面で驚かれることも意識されているそうで、作品には高い造形技術と細かな観察眼が反映されています。

制作のインスピレーションは、道端に咲く花や昆虫など、日常の自然から得ることが多いとのこと。身近な自然の中にある形や生命感を、独自の陶芸表現へと落とし込んでいます。

繊細な昆虫作品への挑戦

今後挑戦したいテーマについて伺うと、野村さんは次のように語ってくださいました。

「昆虫の細長い手脚や触角を折れないように工夫しながら、緊張感も持たせてどう造形するかが大きな課題です」

これは、単なる“リアルな再現”ではありません。陶芸という壊れやすい素材で、繊細な昆虫の構造をどのように成立させるか。その中には、構造設計・焼成・重量バランス・強度など、非常に高度な技術的課題が含まれています。

今後は、さらに昆虫作品の割合を増やしていきたいとのことでした。

「昆虫の緊張感」を陶芸で表現する

野村さんの作品を見てまず印象的なのは、“生き物の空気感”です。

特に昆虫作品には、単なるリアルな再現ではない、独特の緊張感があります。細い脚。不規則な関節。今にも動き出しそうな姿勢。

しかし、それらはすべて陶芸という壊れやすい素材で作られています。

野村さんは現在、「昆虫の細長い手脚や触角を折れないようにどうしながら、緊張感も持たせてどう造形するか」という課題に強い関心を持ちながら制作を続けられています。

これは、単に“リアルに作る”という話ではありません。

陶芸では、乾燥・焼成の過程で作品が収縮し、細いパーツは破損しやすくなります。さらに、焼成時の重力や歪みも考慮しなければならず、昆虫のような繊細な構造を成立させるには、造形だけではなく構造設計そのものが必要になります。

それでもなお、あえて難易度の高いテーマへ向かっていく。

その姿勢には、「技術的に難しいものを成立させたい」という探究心と、「見る人を驚かせたい」という純粋な表現欲求の両方が感じられます。

野村さんは今後、さらに昆虫作品の割合を増やしていきたいと考えているそうです。

「生活や心を豊かにしてくれるもの」

最後に、「アートとは何か」という問いに対して、野村さんはこう答えてくださいました。

「生活や心を豊かなものにしてくれるもの」

そして、自分の作品を通じて届けたいものについては、「感動や驚き」 「日常にゆとりを感じてもらうこと」と語ってくださいました。

この言葉は、野村さんの作品そのものをよく表しているように思います。

昆虫作品に感じる、どこか張り詰めた空気感。蟹の一輪挿しにある、少しユーモラスで親しみやすい存在感。そして、作品が部屋の中に置かれた時に生まれる、小さな会話や視線の動き。

野村さんの作品は、単に“飾るもの”というよりも、日常の空気を少し変えてくれる存在なのかもしれません。

野村俊介さんのWebサイトのモックデザイン、白を基調とした背景にヘッダー部分に野村俊介Official Websiteと記載されており、ボディの中央に陶器の玉を転がす陶器のスカラベの写真が写っている

今回、Webサイト制作を行った背景には、「ホームページは無いのですか?」とお客様から尋ねられることが増えてきた、という事情もあったそうです。SNSだけでは伝えきれない制作背景や活動情報を整理し、作品と向き合う場として、自身のWebサイトを持つことを決められました。

現在は、作品の繊細さゆえ海外発送には慎重とのことですが、将来的には海外の方にも作品を見てもらいたいという想いも持たれています。

Web制作の過程について振り返っていただいた際には、「制作の進捗状況から完成後のアフターケアまで本当に丁寧に教えていただけて、パソコンが苦手な自分でも安心できました」という言葉もいただきました。

サイト制作を通じて印象的だったのは、“作品をどう見せるか”だけではなく、“どんな想いで作っているのか”を一緒に整理していくプロセスそのものだったように感じます。

陶芸家・野村俊介さんについて

茨城県取手市を拠点に活動する陶芸家。

高校時代に陶芸と出会い、現在は電動ろくろ・手びねり・焼成などを組み合わせながら、昆虫や甲殻類をモチーフとした独自の造形作品を制作している。「思わず家に置きたくなる作品」「生活を彩る作品」をテーマに、実用性と造形的驚きを両立させた作品づくりを続けている。

特に、陶芸では難易度が高いとされる細い脚・触角・立体構造を持つ昆虫作品に積極的に取り組んでおり、緊張感のあるフォルム表現に強いこだわりを持つ。

日常の自然観察から着想を得ることも多く、花や昆虫など、身近な自然の形態や生命感を作品へと落とし込んでいる。現在は、展示活動やSNS発信に加え、自身のWebサイトを通じた作品アーカイブ・活動発信にも取り組んでいる。

問い合わせはSNS経由で受付中。


関係者紹介

野村俊介さんの肖像を代替する作品画像、スカラベを陶器で表現した作品、陶器のスカラベは、真っ青な球体の上に乗っている。

野村俊介 (Shunsuke Nomura)

東京都出身、陶芸家。現在、茨城県取手市を拠点に活動中。昆虫や甲殻類など外骨格を持つ生物をモチーフに、陶芸とは思えないほど繊細で写実的な造形表現を追求している。2024年 東京藝術大学美術学部工芸科陶磁ガラス造形専攻卒業、2026年 東京藝術大学大学院美術研究科工芸専攻陶芸分野修了。金属と陶器を組み合わせた独自技法にも取り組む。アートフェア東京やKOGEI Art Fair Kanazawaなど国内主要展示に参加し、「藝大アートプラザ賞」や「国際瀧冨士美術賞特別賞」などを受賞している。作品画像の著作権は野村俊介に帰属する。© Shunsuke Nomura, All Rights Reserved.

腕を組んで壁によりかかる渡辺浩司の肖像

渡辺浩司 (Koji Watanabe)

東京知的財産コンサルティング事務所(Tokyo IP Consulting)代表弁理士。東京大学理学部卒業、同大学院理学系研究科修士課程修了、同博士課程中退。2006年より弁理士。特定侵害訴訟代理業務付記。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。2014年にドイツ連邦共和国 Eisenführ Speiser・大韓民国YOU ME特許法人インターン。複数の大手特許事務所・特許法律事務所に勤務。都内弁理士事務所所長代理。独立行政法人日本貿易振興機構イノベーション・知的財産部出向。外資系設計会社財務・法務担当(役員ポジション)等を経て東京知的財産コンサルティング事務所設立。現在、プログラマーとしても活動中。主要取扱言語は、Web系言語全般、ruby、PHP、Python等。 


Reference

  1. アーティストのブランド戦略支援サービスの開始について | Web制作とデータ分析を統合し、無形資産としての価値の可視化を支援 [Link]
  2. 芸術家にとってのブランド力とWeb戦略 | 情報発信・データ活用による信用力の構築 [Link]
  3. 弁理士による若手芸術家のブランド戦略支援の実施と関連ウェブサイトのリリースについて [Link][PRTimes][Nikkei]

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